くろまめマスターのブログ

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【2021年版】ピロリ菌は本当にやっつけるべき?ピロリ菌について感染の原因や検査法、除菌のメリット・デメリットなど解説します。

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こんにちは、くろまめマスターと申します。

今回のテーマはピロリ菌です。

 

ピロリ菌は人間の胃の中に住みつく細菌です。

全世界の半数以上が感染しており、日本においても約3000万人が感染しているといわれています。

そしてピロリ菌が胃がんの原因と考えられるようになったため、特に胃がん患者が多い日本では”胃がん撲滅”を目指して、積極的にピロリ菌をやっつける除菌療法が進められました。

なんと2013年からは世界で唯一、ピロリ菌を持っている患者は全員、保険診療で除菌療法が受けられるようになったのです。

しかし最近になって、本当に胃がんを予防できるのか、また除菌することで他に悪影響があるのではないかという意見が聞かれるようになってきました。

そこで改めてピロリ菌について新たに分かってきたこと、除菌のメリット・デメリットなどをできるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。

宜しくお願いします。

 

 

ピロリ菌はいつ、どうやって体に入ってくる?

幼少期は体の防御機能が未熟なので、一般に5歳以下でピロリ菌に感染しやすいと言われます。大人になってからは基本的に感染しません

感染経路としては、ピロリ菌が存在する水や食べ物を口にいれることが主な原因であると考えられていました。

確かに原因の一つではありますが、日本経済の高度成長期に合わせて上下水道など衛生環境が改善したことで、感染率が著しく低下しています。

そのかわり最近注目されているのが家庭内感染であり、特に母親からの感染が主体であると言われています。

2005年の国内の論文では、ピロリ菌をもった母親から生まれた44人の子供が5才になるまで調査したところ、そのうち5人(11%)の子供にピロリ菌感染が認めまれました。いずれもピロリ菌のDNA検査を行うと、母親のピロリ菌と一致していることが確認されています。

つまり、母親がピロリ菌をもっていれば、10人に1人くらいは子供もピロリ菌を持っている可能性があるということになります。

 

とはいえ母親を責める必要は全くありません

後述しますが、ピロリ菌はアレルギー性の病気を起こりにくくするなど、子供にとって良い面もあるからです。

ピロリ菌が原因と考えられる病気

慢性胃炎(萎縮性胃炎)

ピロリ菌の毒素によって胃に炎症が起こりますが、ほとんど無症状のうちに胃全体に炎症が拡がっていきます。ただし90%以上の方は慢性胃炎があっても問題はありません。治療が必要な病気を発症する人は一部の方だけです。

胃がん

長期間におよぶピロリ菌からの炎症により、胃の細胞に遺伝子変異が起こりやすくなります。つまり、胃の細胞が"がん細胞"に変身しやすくなります。もちろんピロリ菌がいる人すべて胃がんが起きるわけではなく、慢性胃炎と同様に9割以上の方はピロリ菌に感染していても問題は起こりません。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍

ピロリ菌の毒素によって胃に傷ができることで、傷ついたところのバリア機能が弱まります。防御が弱くなると胃酸の刺激に耐えられなくなり、小さな傷がやがて大きな傷(潰瘍)になることがあります。

ディスペプシア

食後の胃もたれ、胃痛などの症状(ディスペプシア)と関連があると言われています。

胃MALTリンパ腫

血液のがんの一種です。胃のピロリ菌と戦うための血液中の細胞ががん細胞に変化して起こります。

免疫性血小板減少性紫斑病

ピロリ菌と戦うはずが、勢い余って血小板という血液中の大事な細胞も攻撃してしまいう病気です。これにより血小板が減ってしまい、血が止まりにくくなったり、出血しやすくなります。

鉄欠乏性貧血

ピロリ菌の攻撃によって胃炎が起こり、そこからほんの少しずつの出血が続くことで貧血になることがあります。また、血を作る材料となる鉄分をピロリ菌が消費してしまうことも、貧血の原因になることがあります。

ピロリ菌が胃にいるか調べる方法

ピロリ菌検査は血液検査、尿、便、呼気(フーっと吐いた息)など様々な方法で調べることができますが、以下の方法で検査を受ける方が多いと思います。

ABC検診(胃がんリスク検診)

職場検診で35歳、または40歳以降で検査の案内があります。

職場検診を受ける機会がない方でも、お住いの自治体から通知、または直接医療機関に申し込むことで検査を受けることが可能です。

検診なので自費(3千円~5千円)ですが、一生に一回受けるだけで済みますので、是非受けてみてください。

医療機関については"ABC検診","お住いの地区"で検索すれば、受診可能な医療機関がたくさん表示されます。医療機関によって精度が変わるものではありませんので、どこで受けても結果は同じです。

検査方法は血液検査となり、A,B,C,Dいずれかの判定を受けます。

B,C,D判定であればピロリ菌がいる(厳密に言うと、D判定の方は広範囲の炎症によって焼け野原のような胃になっており、ピロリ菌も住めない状態になっているため、ピロリ菌はいないのですが…)ということになります。

 

ちなみに、胃がん検診はバリウム、もしくは胃カメラを使った検査になります。

胃がんリスク検診と胃がん検診は違いますのでご承知ください。

胃の痛みや不快感などで胃カメラ検査を受ける

胃カメラ検査を受けた方については、基本的には全員ピロリ菌の検査を保険診療で受けることができます。

その際には様々な方法でピロリ菌の確認を行うことができ、尿や便、吐いた息での検査は簡単で痛みもないためお勧めです。

もちろん血液検査でも確認できますし、胃カメラ検査中に胃の粘膜を少しだけ"ちぎって"調べることもできます。

ピロリ菌をやっつける方法

ピロリ菌をやっつける前に必要なこと

胃の中にピロリ菌が住んでいることが分かれば、除菌をするかどうかの選択となります。

ここで注意点ですが、ピロリ菌の除菌を保険診療で行う場合は胃カメラ検査を受ける必要があります

胃カメラ検査が必要ということで、除菌へのハードルがかなり上がる気がしますが、別にいじわるするために決まったわけではありません。

すでに胃がんがあった場合、除菌療法によって胃がんによる痛みや不快感が消失し、 胃がんを見つけるための精密検査を受けるチャンスを逃してしまうからです。発見が遅れて手遅れになるのを防ぐために、ピロリ菌除菌の前に胃カメラ検査を受ける必要があるのです。(それでも胃カメラが嫌な方は、自費でピロリ菌除菌もできますが…)

 

胃カメラについては、鼻から入れるタイプは細くて苦痛が少なく、また解像度がめちゃめちゃ向上してますのでお勧めです。(以前は細いカメラほど解像度が悪く見えにくかったですが…)

ピロリ菌除菌の具体的な方法

医療機関で除菌薬を処方してもらいます。

3種類の薬を1日2回、朝と晩で7日間飲んでください。

飲み終わってから1-3か月期間をあけて、ピロリ菌検査をします。

大体70%くらいの人はピロリ菌はいなくなっており、除菌に成功したことになります。

残念ながら除菌できなかった方でも、もう1回治療が可能です。

少し薬の種類を変えて、また3種類の薬を1日2回、朝と晩に7日間飲みます。

それからまた1-3か月期間をあけて、再度ピロリ菌の検査をします。

これで90%以上の方が除菌に成功します。

それでも除菌できなかった方については、3回目、4回目の治療もありますが、自費での治療となります。しかし多くの場合で、そこまでして除菌にこだわる必要はないと思います。(理由は後述します。)

ピロリ菌をやっつけるメリット…?

ピロリ菌が原因となる疾患を改善、予防することができます。

胃MALTリンパ腫や免疫性血小板減少性紫斑病であれば、ピロリ菌除菌が最初に行うべき治療として明確に推奨されています。

慢性胃炎であれば徐々に改善して元気な胃にもどっていき(すでに手遅れで治りきらない場合もあります)、胃・十二指腸潰瘍であれば(本当にピロリ菌が原因の胃・十二指腸潰瘍であれば)再発予防に必要な胃薬を手放すことが可能になります。

またディスペプシアや鉄欠乏性貧血についても(本当にピロリ菌が原因であれば)改善が期待できます。

という風に、ピロリ除菌のメリットを享受するためには()で示したような条件が必要となります。

本当に胃がんは撲滅できる?

ピロリ菌を除菌する最大の目的、「胃がんを撲滅させる」については黄色信号です。

実際の医療現場において、除菌後に胃がんが発見されるケースが無視できない頻度で見つかっており、人における除菌効果がそれほど明確なものではないとの実感が共通認識としてあると考えます。

その理由の一つとして、"胃がんを抑制した"と発表した論文の多くは、実は研究機関が5年以内と短いものが多いのです。

極端な話をすれば、短い研究期間で結果がでたため、見切り発車で「ピロリ菌を除菌することで胃がんが抑制できる」と信じて片っ端から除菌してみたものの、10年近く過ぎた時点でそれほど効果が出ていないことが分かったということになります。

 

ただし、まったく効果がないわけではありません。

除菌によってがんの増殖・成長速度が低下する可能性が示唆されています。

(そのため5年程度の研究では胃がんを抑制しているように見えましたが、20年観察すると胃がんが出現することが分かってきたのです。)

成長速度をおさえることで、胃がんの死亡率が低下するかはまだ定かではありません。しかしピロリ菌をやっつけた後も、胃カメラ検査などによる定期的なチェックは必要ということになります。

ピロリ菌をやっつけるデメリット-実はピロリ菌には良い働きもある?-

ピロリ菌には良い働きもあるかもしれないことが、最近分かってきました。

一例として、子供にとっては、ピロリ菌が胃の中にいることでアレルギー性の病気が起こりにくくなり、除菌することでその効果がなくなるかもしれないと言われています。
(「小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症の診療と管理ガイドライン2018」改定2版より)

 

また別の研究では、ボランティアで参加した中学生8名のうち、2名で除菌後に腸内細菌に変化をきたしたことが分かりました。最近は多くの疾患が、腸内細菌のバランスが崩れたことが原因であることを指摘されています。そのため、ピロリ菌の除菌によって腸内細菌の環境が変化し、新たに別の病気が発症する可能性が指摘されているのです。

 

そして米国国民健康栄養調査(National Heaith and Nutrition Examination Survey:NHANES アメリカ全土で実施された健康調査)にて、”ピロリ菌感染は胃がんによる死亡を増加させるが、その代わり脳卒中等による死亡を低下させており、別にピロリ菌に感染していても死亡しやすいわけではない”と報告しました。

これはつまり、「胃がんを抑制するためにピロリ除菌をしても、他の全身的な病気を起こしやすくする可能性がある」ということになります。

結局、ピロリ菌はやっつけるべきなの?

ピロリ菌の良い面、悪い面を説明してきましたが、結局ピロリ菌が検出された場合、どうすればいいのかということをお話します。

除菌治療を受けた方がいい方

ピロリ菌が原因である病気を発症した方

医師の診察により、ピロリ菌感染が原因である可能性が高いと判断された病気(「ピロリ菌が原因と考えられる病気」の項目を参照ください)をすでに発症されている方は、ピロリ除菌により病気が治る可能性がありますので、積極的に除菌を勧めます。

早期胃がんに対して胃カメラを使って切除した方、また胃がんを発症した家族がいる方

これらの方については十分な研究のもと、胃がん抑制効果が証明されておりますので、ピロリ菌が陽性であれば、除菌が勧められます。

また小児や若年者においても、「親世代やその上の世代で胃がんをもった方がいれば、除菌を希望した場合において除菌療法を行うことを検討する」(日本小児科栄養消化器肝臓学会ガイドライン エビデンスレベルB(弱い推奨))とのことであります。

両親やおじいちゃん、おばあちゃんが胃がんと診断されていれば、子供であっても除菌するメリットはありそうです。

まとめ

ピロリ菌の悪い影響と、実は良い影響もあるかもしれないという点、また除菌のメリット、デメリットについて解説しました。

今回最も大事なこととしては、「ピロリ菌除菌をしたからといって、胃がんを完全に予防できるわけではありません。そのためピロリ菌がいる方は、除菌後の方も含めて定期的に胃カメラ検査を受けて下さい」ということです。

除菌する、しないに関わらず、定期的な胃カメラ検査(胃炎の程度によって1-2年ごと)を施行することで、胃がんを早期に発見し、完治させることは十分に可能です。

現在もピロリ菌の研究は続けられていますので、ピロリ菌がいると言われた場合のとるべき行動が、今後もっと明確になってくると思います。

 

以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。