くろまめマスターのブログ

あなた自身が名医です。自分の体の声を聞いてみましょう。

脂肪肝の66歳女性

こんにちは、くろまめマスターと申します。

病院には日々さまざまな患者さんが来られます。

病気に対する考え方は人それぞれであり、こちらが勉強させてもらうことも多々あります。

その中で個人的に感銘を受けた患者さんとのエピソードをお話し、「健康に不安を感じる人生から、安心して最後を迎えられる人生」へと変化する助けになれば幸いです。

 

今回も脂肪肝炎で通院中の患者さんの紹介です。

健康診断で軽度の肝機能障害を指摘され、約10年前に病院を受診されました。

 

過去の健診結果を拝見すると、体重の増減の幅が大きい方であり、ある年は体重65kg(身長166cm)、次の年は60kg、その次の年は64kgと一定ではありませんでした。

 

体重が増えると肝機能が高値となり、減量すると肝機能が改善するという経過であり、まさに脂肪肝炎の典型的なパターンでありました。

ご本人も自覚されており、健診時期が近づいてくると3週間で5kgくらい減量して検査を受けているとのことでした。

 

ダイエットを継続するという方針で月に1回、4か月ほど通院されていましたが、その後通院されなくなっておりました。

 

それから6年が経ち、高血圧の治療を受けている病院からの紹介状をもって再診されました。

受診した時には体重は60kgでしたが、肝機能は以前よりも高くなっており(AST:74, ALT:113,γGTP:71)、当時の担当医から肝臓の薬が始まりました。

 

ウルソという薬を始めるも良くはならず、グリチロンという薬に変更となりましたが変わりないため、肝生検をして調べる方針となりました。

 

肝生検とは、内部が空洞になっているボールペンの先くらいの太さの針を肝臓に刺すことで、ボールペンの芯×2cmくらい肝臓をくり抜いてくる検査のことです。

くり抜いた肝臓を顕微鏡で観察し、細胞レベルで肝臓に何が起こっているか調べることができます。

 

肝生検の結果は脂肪肝炎であり、予想と違わない結果であったとのことです。

しかし肝生検の際に入院したことが刺激になったのか、患者さんの意識が変わり1か月後には体重は始めて58kgと60kgを下回り、肝機能の数値も良くなる傾向を示していました(AST:65, ALT:98, γGTP:61)。

 

ここで薬による治療を中止し、体重を維持しリバウンドさせないことの必要性を説明すると良かったのかもしれませんが、3種類目の薬を飲む方針となったのでした。

 

効かない薬でも、飲む人が効くと思っていると本当に効くこともあります。(プラセボ効果)

ただ実感としては、薬を飲んでいると体が守られているように感じて、生活習慣へ意識が向かなくなってしまうことの方が多い気がします。

この患者さんも徐々に体重がまた増えてきて、それとともに肝機能は上昇し、薬は継続されたままでした。

 

そんな状態が4年ほど続き、担当医の退職のため自分がこの患者さんを引き継がさせていただくこととなりました。

 

まずは今までの経過を確認し、脂肪肝炎について改めて以下のように説明しました。

  • 脂肪肝炎に特効薬はない
  • ダイエットが最も効果的な治療
  • ただしダイエット→リバウンド→ダイエット…と繰り返すことは、肝臓へダメージが蓄積されて良くない。
  • リバウンドしても、長期的にみて減量できていればOK。

 

口で言うのは簡単ですが、実際行動を変えることは簡単ではありません。

とくにダイエットについては、医者でも挫折している人は多いです。

 

しかしこの患者さんは炭水化物を制限することで再び体重を減量でき、ウォーキングも取り入れて体重を維持してくれました。

5か月たった時点で肝機能は正常化(AST:29, ALT:32, γGTP:27)し、大変喜ばれておりました。

肝機能が改善したのは生活習慣を見直したおかげであり、自分自身で治療し、病気を治したことを説明しました。

そして薬についても不要であることを説明しましたが、これについては薬を飲んでいないと不安という思いがあるとのことでしたので、まずは減らしていくことを説明し、ご了解いただきました。

 

病気を治す薬もあれば、臭いものにフタをしているだけの薬もあります。

いわゆる生活習慣病に対して使われる薬は、後者の薬になります。

生活習慣病という名前の由来は、聖路加国際病院で100歳を超えても現役を貫かれた日野原先生が、生活習慣を見直す重要性を世間に認識させてもらいたくて名付けたものです。

薬を飲むだけが治療ではないことを、微力ながら発信し続けていきたいと思う次第です。

 

以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。