くろまめマスターのブログ

あなた自身が名医です。自分の体の声を聞いてみましょう。

自己治癒力を高め、がんと上手く付き合う

「自己治癒力を高めることが、がんとうまく付き合う秘訣である。」

 

これは私が肝臓がんの診療をする上で心がけている考えです。

 

このようにいきなり宣言しても、これを読んだ方の多くはおそらく2つのことを疑問に思われると思います。

 

一つは、「自己治癒力とはなんぞや?」ということ。

もう一つは、「がんとうまく付き合う?やっつけるんと違うの?あきらめろってことか??」ということです。

 

順番に理由をお話させてください。

 

まずは自己治癒力についてです。

私の外来には、肝臓の病気をもった患者さんが多くいらっしゃいます。

そんな患者さんから、「肝臓は切った後に大きくなるって本当ですか?」と質問されることがあります。

 

これは実は本当なのです。

トカゲの尻尾のように、完全に元の大きさに戻るわけではありません。

しかし少しずつではありますが、着実に元に戻ろうと大きくなっていくのです。

 

このようにお返事すると、大体の方は「人間の体ってすごいんですね〜」と驚かれます。

 

そうです。人間の体ってすごいんですよ!

当たり前のこととして、あまり認識されていないのが残念でなりません。

 

このように、本来の姿に戻ろうとする力を「自己治癒力」と言います。

これは決して特別な才能ではなく、誰もが自然に持っている偉大な能力なのです。

 

そしてこの自己治癒力は、本来の姿を見失った異質の細胞、がん細胞にも作用するのです。

がん細胞は、元々は自分自身の細胞が変異したものです。

本来の自分の姿を取り戻すべく、自己治癒力はがん細胞と戦う大切な力となります。

 

次に、なぜガンを倒すのではなく、うまく付き合っていくと考えるのか。

 

私の主な仕事は肝臓内科と言われる領域であり、手術を担当する外科ではありません。

そのため、外科で手術はできませんと言われた肝臓がんの患者さんも多く来院されます。

 

「なるほど、手術できないと言われた人だから、うまく付き合うしかないんだ」

と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。

 

内科の治療でも、カテーテル治療やラジオ波焼灼療法という治療を組み合わせ、手術と同じ効果を得ることもできます。

しかしたとえ完全に肝臓がんをやっつけたからといって、がんが再発するかもしれないという不安から完全に逃れることは難しいのです。

 

治療後も肝臓ガンが再発していないか、定期的に病院でチェックを受けます。

その度に患者さんは、不安な気持ちで検査を受けられているのです。

 

そういった治療後の患者さんの不安な気持ちも含めて、がんとうまく付き合っていくという言葉を選んでいます。

 

そして今まさにがんの治療中である方もいらっしゃいます。

誰もががんを克服したいと思って治療を受けられます。

 

しかし決して、がん治療に心が支配されてしまい、“生きる目的が抗がん剤治療をうけること”になってはいけません。

“自分らしく生きるために抗がん剤治療を受けている”

これくらいの距離感で治療が受けられることが大事であると考えています。

がんとうまく付き合う、これは自分らしく生きるという意味です。

このような姿勢で治療を受けていただけるように心がけています。

 

治療中、治療後いずれの状態であっても、自己治癒力という、人間誰もが本来もっている力を利用しない手はありません。

 

次回は、自己治癒力を高めるための取り組みについてお話させていただきます。