「子供たちに手芸でプレゼントを贈っています。」
今回ご紹介する患者さんは、肝臓がんに対して抗がん剤治療を行っている佐藤さん(仮名)という70歳代の女性です。
現状、肝臓内に無数のがん細胞が巣を作っており、分子標的薬を使った治療を行っています。
佐藤さんはボランティアで、養護施設の子供たちへ手作りのプレゼントを贈っています。
プレゼントは幼稚園や小学校で必要となる給食袋やエプロンなどで、全て佐藤さんの手作りだそうです。
「もうすぐ新学期が始まるので、いろいろ準備が忙しいんです」とお話される表情は優しさに満ちています。
きれいな布を見つけるたびに、何を作ろうかとワクワクするそうです。
がんになると、「誰かの世話になり続ける、役に立たない人間になってしまった」と大きな喪失感を感じる方がいらっしゃいます。
ただ、好きなことを続けていると、案外誰かの役に立つ仕事が身についているものです。
そして役に立ったと実感できると、好きなことは“生きがい”に生まれ変わります。
治療を始めてもうすぐ1年になりますが、佐藤さんのがんの進行は抑えられています。
「子供たちへプレゼントを手作りする」という佐藤さんの“生きがい”は、がん治療を続けるうえでも大切な力になっていると強く感じます。
皆さんもぜひ、自分が幸せになれることを楽しく育ててみてください。
いつか自分を見失うほどのことがあったとしても、その育んだものが自分を取り戻すための“道しるべ”となってくれるはずですから。